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衛生委員会は具体的にどのように行うか?

会議室


ストレスチェック制度を運用するには、労使で協調して健康問題を審議し、その結果を周知する場である衛生委員会の確実な運営が欠かせません。しかし、「平成24年労働者健康状況調査 結果の概要」では、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合は47.2%で、衛生委員会でその内容を調査審議しているのはそのうちの28.9%しかないと示されています。過去の産業医経験や弊社でのコンサルタント等の経験では実態はもっと少ない印象があります。

一方、行政(厚生労働省)としては、平成18年3月の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(通称メンタルヘルス指針)で既に衛生委員会の活用を奨励しています。加えて、平成21年3月に厚生労働省労働基準局長より出された「当面のメンタルヘルス対策の具体的推進について」でも、衛生委員会での調査審議の徹底が強調されています。ですから、ストレスチェック制度の確実な運用のためには、衛生委員会を活用することは当然であると考えているのではないでしょうか。

もしも、衛生委員会の運営が不確かであれば、今年(2015年)の年末までに衛生委員会を確実に開催し、ストレスチェックの運営に支障がないよう準備をしていく必要があります。
上述のメンタルヘルス指針の内容からは、「心の健康づくり計画」に関して、次の事項を実施するよう勧められてます。
●心の健康づくり体制の整備。(事業主、人事責任者・担当者、産業医、衛生管理者等の明示)
●問題点の把握とメンタルヘルスケアの具体策。
●必要な人材の確保と事業場外資源の活用。(専門家人材の確保の可否)
●労働者の健康情報の保護。(機微である情報の取得、保管、破棄と場合によって開示)
●心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直し。(P-D-C-Aサイクルの継続=月次で計画と実施状況を確認していく)

そして、ストレスチェック制度の導入準備にあたる来年(2016年)の1月から3月には、次の内容を話し合い、議事録に残す準備を整えておくのが良いと考えます。
●目的がメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)であり、不調者の早期発見(二次予防)が一義的な目的ではないということを明示、宣言する。
●実施体制(医師、保健師、看護師、精神保健福祉士の有資格者(=実施者)、複数なら共同実施者と実施代表者、実施事務従事者(=事務担当者))の明示。制度担当者(たとえば人事総務部長等)も必要。
●実施方法(使用する調査票、評価方法、高ストレスの評価基準)の決定。
●従業員一人ひとりが受けたか、どうかという情報の取扱い(会社側による把握と受検勧奨も)
●分析結果の利用(ストレスチェックの面接指導の申出の勧奨、)の決定。
●個人の結果の保存方法。(保存者、保存場所、保存期間、セキュリティの確保を含んで)
●個人の結果の事業者への提供の同意を取得する方法。
●個人の結果に係る情報の開示、訂正、追加又は削除の方法と取扱いに関する苦情の処理方法
●従業員はストレスチェックを受けなくともかまわないが、できるだけ受けることが望ましいとする趣旨を周知する。

さらに、ストレスチェック導入本番となる、来年(2016年)の4月度あたりの衛生委員会では、次のような内容の議事録を残すことができるようになると、ストレスチェックの運用が順調であると考えてもよいのではないでしょうか。

改正労働安全衛生法に定められたストレスチェック制度導入に関する審議内容は以下の通りである。本内容は概要であるが、詳細は次月までに人事総務本部で検討し、次回5月度の衛生委員会にて、説明し、審議する。

⓪ 目的、目標

 法の趣旨が未然防止であることから、経営環境が厳しい中、職場ストレスを課題として改めて認識し、不調の未然防止を目的として、個人と職場の両方で対応を行うことを目標とする。

① ストレスチェック制度の目的に係る周知方法

 本衛生委員会の議事録を各職場に掲示し、合わせて各部門及び管理職会議において、人事部担当より、説明を行う。

② ストレスチェック制度の実施体制

 制度担当者は**人事総務部長  実施者は**産業医及び○○○健診機関の**医師並びに**保健師  実施事務従事者は**人事部係長及び**主任(共にメンタルヘルス推進担当者)

③ ストレスチェック制度の実施方法

7月から9月の間、健診月に合わせて、○○○健診機関の用意したアンケートに対して、マークしシート形式で記入する。健診の場合の生活習慣の記入場所とは分けて、個別に自由に記入できる場所をそれまでに検討する。 使用するのは厚生労働省の推奨する57項目の職業性ストレス簡易調査票とする。 面接指導に関しては後述。

④ ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法

 今年度は初めてのため、○○○健診機関による全社と部単位の分析(最低10人以上の回答を前提として)結果を衛生委員会で共有する。

⑤ ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い

 ○○○健診機関は健診月の最終週に受検者一覧を弊社に送付する。それを実施事務従事者は**人事部係長及び**主任は受け取り、健診実施職場内の受検者を特定し、メールでの受検を勧める。

⑥ ストレスチェック結果の記録の保存方法

 ○○○健診機関のデーターベース内と共に印刷された一覧は**産業医に**人事部係長及び**主任が手渡し、他の健康情報と共に、**産業医が施錠して管理いただく。

⑦ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法

 面接指導については、**産業医の助言により、高ストレス状態となる受検者を10%程度見込み、○○○健診機関医師並びに保健師に、医師の面接指導を要する対象者を選定して頂く。該当者のリストは健診実施月の月末に**人事部係長及び**主任が受け取り、これまで実施してきた過重労働面接と同じ流れで案内、スケジュール、実施を行う。  **産業医から就業上の措置に関する意見が出た場合には、本人の了解を**人事部係長及び**主任が得て、**人事総務部長及び**人事課長に報告し、本人と直属の上長が同席の上、措置内容の実行に努める。 

⑧ その関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法、及び⑨ ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法

 これらは、健康情報管理の一環として、窓口は**人事部係長及び**主任として、**産業医に相談しながら、取得、保管、開示を本人の不利益とならぬよう、注意しながら、対応を行う。結果は、**人事総務部長に報告する。

⑩ 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること

 本ストレスチェックは厚生労働省による指針の通り、強制ではない。従って、受検しなくとも、不利益な取り扱いがない。但し、不調が既にあるなど、特段の理由がなければ、受検することが望ましい。此の点は本議事録の掲示等を持って周知していく。

⑪ 労働者に対する不利益な取扱いの防止

本ストレスチェックの受検の有無、医師の面接指導の応諾あるいは拒否ないし、集団での分析結果等に基づき、処遇や配置転換が不当に行われることは無い。
以上


これらは対応の一例ですが、大まかに以上のような進め方が実現できると単にチェックで終わらず、折角の新制度の実効性を高めることができるのではないでしょうか。

メンタルヘルス対策の第一人者
医師 亀田高志氏とは?

旧労働省により創設された産業医科大学を1991年に卒業後、大手鉄鋼会社や外資系企業の専属産業医、産業医科大学講師等を11年間務める。
その後、2006年10月に産業医科大学と共に「職場の健康管理を起点とするサービスを企業と働く人の両方に届けていくこと」を目的とした株式会社産業医大ソリューションズを創設し、同社代表取締役を2006年10月から2016年5月まで務める。

また、日本産業衛生学会指導医、日本内科学会認定内科医、労働衛生コンサルタント等の資格を持ち、EAPコンサルティング普及協会理事でもある亀田氏は、職場の健康確保対策を専門とし、この10年間で、メンタルヘルス等に関する講演、研修の実績は計1,000回以上、参加者は延べ3万人を超える。

その他、主な著書に「管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント」、「ゼロから始めるストレスチェック制度導入マニュアル」、「人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~」(以上、労務行政研究所)等があり、その他、連載寄稿も多数行っている。

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