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”高ストレス”=(イコール)”医師の面接指導”の問題

産業医

”高ストレス”=(イコール)”医師の面接指導”について

今から5年前の2010年から「メンタルチェック」という名称で現在のストレスチェック制度の検討が、厚生労働省で行われてきました。検討が開始された当初は医師の問診による不調のスクリーニングを実施するイメージでした。従って(高ストレス者の評価のように)所見があればそのまま二次検査(精密検査=5%程度と見込まれていた)の指示という流れが考えられていました。つまり”所見あり=(イコール)二次検査”だったわけです。

その受け皿としては、産業医だけでなく、外部の精神科専門医や公的機関が、二次検査や相談窓口として検討されました。しかし、当時は50人以上の事業場という限定がなく、全労働者の5%に二次検査の指示が出た場合の受け皿は準備できないのではないかという議論や専門家団体からの反対がありました。

その後、政権交代を経て、未然防止(一次予防)を主眼とすることに衣替えした、現在のストレスチェック制度では、上記の二次検査にあたる部分は過重労働の際と同じような「医師の面接指導」という枠となり、産業医ないしストレスチェック外部機関の医師が主にこれに対応することになっています。

その際、”高ストレス者=(イコール)医師の面接指導対象者でも構わない”という論調が行政側からだけでなく、特に外部機関の側から企業等への説明で行われています。しかし、そうした運用は大きな問題を引き起こすことを認識されているでしょうか?

①受検する人

高ストレス者になると即、医師の面接指導を勧められることになる。受検者側から見れば、その多くは不必要な医師の面接指導となる可能性があり、その負担感から、医師の面接指導を希望する者が減り、高ストレス者数に対する医師の面接指導数が著しく低くなる可能性がある。受験する人の側から言えば、不調が疑われるケースのように、医師の面接指導がどうしても必要そうな場合にのみ、医師の面接指導対象者であると絞り込んでほしいと希望することが多い。

②医師等の実施者

本来、高ストレス者から医師の面接指導対象者を絞り込むべきであるが、職業性ストレス簡易調査票に関して、そうした明らかな科学的根拠のある基準がないために、そうした判定を行ったことがない場合には、いわゆる不調者を見逃す恐れがあることから、自信を持って、絞り込み作業(評価・判定)を行うことができない。

③外部機関

高ストレス者から医師の面接指導対象者を絞り込むことのできる医師である実施者をなかなか確保できない。確保できた場合でも評価・判定に要するその医師へのコストを価格に反映できない。また、絞り込んだ結果、のちに自殺等のケースが発生した場合、医師の面接指導対象者をしていなかった時には責任を問われる可能性がある。したがって、ストレスチェックを販売する際には”高ストレス”イコール”医師の面接指導”と言ったほうがコストや後のリスクを回避できる。

行政の側では、公開されている資料からは、絞り込みが望ましいと考えているようです。けれども、高ストレス者から医師の面接指導対象者を絞り込む科学的基準がない以上、”高ストレス者=(イコール)医師の面接指導対象者”とする運用を否定していません。つまり、企業等の側の判断に委ねるしかないというスタンスのようです。

企業や公共団体で実施する側の立場で考えるなら、絞り込みがあったほうが良い制度になるに違いありません。そのためには、実施者か外部機関がその絞り込みに誠実に対応してくれる必要があります。

もしも、”高ストレス者=(イコール)医師の面接指導対象者”という運用を行ってしまうと、折角受検してくれた従業員に問題やリスクを押し付ける結果となる可能性があります。そうなってしまうと、ストレスチェック制度導入にコストと時間を割く意義が決定的に損なう結果を招く可能性があります。

制度の義務化まであと10日を切りました。

制度の義務化まで10日を切りました。衛生委員会での準備作業や外部機関の選定、実施者の候補である産業医との対話の中で、「高ストレス者から医師の面接指導対象者の絞り込み」の運用の可能性と可否をよく検討していくことをお勧めします。

メンタルヘルス対策の第一人者
医師 亀田高志氏とは?

旧労働省により創設された産業医科大学を1991年に卒業後、大手鉄鋼会社や外資系企業の専属産業医、産業医科大学講師等を11年間務める。
その後、2006年10月に産業医科大学と共に「職場の健康管理を起点とするサービスを企業と働く人の両方に届けていくこと」を目的とした株式会社産業医大ソリューションズを創設し、同社代表取締役を2006年10月から2016年5月まで務める。

また、日本産業衛生学会指導医、日本内科学会認定内科医、労働衛生コンサルタント等の資格を持ち、EAPコンサルティング普及協会理事でもある亀田氏は、職場の健康確保対策を専門とし、この10年間で、メンタルヘルス等に関する講演、研修の実績は計1,000回以上、参加者は延べ3万人を超える。

その他、主な著書に「管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント」、「ゼロから始めるストレスチェック制度導入マニュアル」、「人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~」(以上、労務行政研究所)等があり、その他、連載寄稿も多数行っている。

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