セミナー・研修

企業担当者向け

個人のストレスチェック結果の開示・同意について

チェック


ストレスチェックで標準的に使用される職業性ストレス簡易調査票の57の質問に答えると、大きく 領域Aとして、仕事のストレス要因=仕事のさせ方、与え方 領域Bとして、ストレス反応=心身の自覚症状 領域Cとして、周囲のサポート=上司、同僚との人間関係 を点数化することになります。 こうした質問に正直に回答したり、入力した結果が、上司や同僚に知られれば、法令指針で禁じられている不利益な取り扱いを受けること以外にも、人間関係の悪化を招いたり、嫌な思いをするなどの体験をするかもしれません。 対象者となる従業員がその可能性を心配すると、受検者が減り、医師の面接指導を受ける人が出てこず、折角新設されたストレスチェック制度は形骸化してしまいます。 従って、ストレスチェック制度における厚生労働省の法令指針や企業等への啓発の情報の中では、個人情報保護とプライバシーの保護が強調されています。 そのため、受検者の同意がない限り、実施者と実施事務従事者以外はその結果を知ることができず、医師の面接指導に手をあげて、ようやく本人が開示に同意したとみなすことになっています。 ところが、この「同意を取る」ことが独り歩きしている感があります。つまり、情報開示への同意を取った後のその活用を考えず、システムや手続き上で同意を取るステップばかりが強調されているのです。 最低限、同意が必要な場合は、医師の面接指導が実行され、その結果、就業上の措置の必要性を産業医等の医師が企業等に対して、意見したケースのみです。 その時には、上司や人事責任者が本人と打ち合わせながら、検討するので、就業上の措置のきっかけとなったストレスチェック結果の開示は当然、望ましいと考えられます。 しかし、重度のうつ状態を思わせるストレスチェックの結果であり、なおかつ職場から危険なサインの情報でもない限りは、医師の面接指導が必要だと評価・判定された対象者にさえ、結果の開示を求めるのは、まったく必要性がないかもしれません。ちなみに、医師の面接指導の後に、個人へのアドバイスで済むことも少なくありません。その際、高ストレス状態だったと改めて、上司に知らせる必要性が本当に高いでしょうか? 医師の面接指導が必要な対象者には実施者や実施事務従事者からそれを勧めることができます。また、受け皿としての相談窓口があれば、相談に行くよう勧めることもできますが、そこには同意が必要とは思われません。 さらに、高ストレス者に対しても同様で、もしも、その結果を開示することを同意したからといって、医師の面接指導の対象者にはなっていない場合に、上司がそれを聞いて、何ができるのでしょうか? 単純なコミュニケーションの失敗等で、対話で解消する程度の問題なら、大丈夫かもしれません。けれども、実際には、部下の高ストレスを知ったからと言って、具体的な対応を行う、あるいはそれができる管理職は少ないと思います。あるいはかえって人間関係を悪化させることにならないか、むしろ危惧されます。 集団ごとの結果の集計や分析を行う際に10人未満の場合には、情報の開示の同意を求める可能性があります。 けれども、そうした原因を突き詰めるようなやり方をストレスチェック制度の導入の初年度から実行するより、穏便に、全社や10人や20人より大きな集団でまずはソフトに分析するくらいが良いのではないでしょうか。 このように考えていくと、開示の同意を得たからと言って、そのストレスチェック結果を活用する場面は極めて少ないのです。 個人情報の保護やプライバシーの保護のためには、ストレスチェック結果の開示には、受検者本人の同意を取ることは絶対に必要です。 しかし、同意を得て、そのストレスチェック結果を活用する機会は、むしろ限られているということを、制度を運用する立場・人事部門として、よく認識しておく必要があると、私は考えています。

メンタルヘルス対策の第一人者
医師 亀田高志氏とは?

旧労働省により創設された産業医科大学を1991年に卒業後、大手鉄鋼会社や外資系企業の専属産業医、産業医科大学講師等を11年間務める。
その後、2006年10月に産業医科大学と共に「職場の健康管理を起点とするサービスを企業と働く人の両方に届けていくこと」を目的とした株式会社産業医大ソリューションズを創設し、同社代表取締役を2006年10月から2016年5月まで務める。

また、日本産業衛生学会指導医、日本内科学会認定内科医、労働衛生コンサルタント等の資格を持ち、EAPコンサルティング普及協会理事でもある亀田氏は、職場の健康確保対策を専門とし、この10年間で、メンタルヘルス等に関する講演、研修の実績は計1,000回以上、参加者は延べ3万人を超える。

その他、主な著書に「管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント」、「ゼロから始めるストレスチェック制度導入マニュアル」、「人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~」(以上、労務行政研究所)等があり、その他、連載寄稿も多数行っている。

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